ビブラートのピッチ位置制御による情感表現

前のレッスンでビブラートについて詳しく解説してきましたが、特に音程の揺らぎを伴うビブラート(音程ビブラート、ミックスビブラート)は情感表現の手段として非常に有用なものです。

音程ビブラートには反復周期の速さ、振幅の深さという2つの要素があり、これをうまく制御することが情感表現において重要であることは以前にもご紹介したとおりですが、実はさらにもうひとつ、ピッチの位置という要素があります。

音程ビブラートの3要素

  1.速さ(どれくらいの速さ(周期)でビブラートをかけるか)
  2.深さ(どれくらい大きく揺らすか)
  3.ピッチの位置(平均ピッチの基準音に対する高低)

言葉では分かりづらいと思いますが、以下の図を参考にして頂ければ理解しやすいと思います。

まずグラフの見方ですが、グラフの縦軸がピッチ(周波数)で上に行くほど音程が高くなると考えてください。横軸は時間を表しています。赤いラインが基準となるビブラートの波形です。

1.ビブラートの速さ

ビブラート:スピード

赤い基準となる波形に対して、青い波形は細かい波になっていることが分かると思います。

あまりに細かいビブラートは以前紹介したとおり聞きづらい場合がありますが、ごく短い時間アクセントとして利用したり、早くても次に紹介する「深さ」を十分に小さくすることで独特な心地よいニュアンスを与えることが出来る場合があります。

2.ビブラートの深さ

ビブラート:深さ

先ほどと赤い基準波形はまったく同じ縮尺ですが、こちらの青い波形は1つ1つの波が大きくなっています。つまり揺れの大きな深いビブラートということになります。

これもあまりに深すぎると自分の演奏に酔っているかのようなネガティブな印象や、時代遅れな印象を与えかねませんが、曲調であったり、特に強い情感が必要な場面で部分的に深く強調することで、良い意味で強烈なニュアンスを与えることが出来る場合があります。

3.ピッチの位置

ビブラート:ピッチの位置
黒線が基準音の正確なピッチ位置を示しています。赤い基準波形は基準ピッチに対して上下対称となるビブラートですが、青い波形は上下非対称でピッチがやや上ぶれしています。

弦楽器の多くはビブラートを表現するために弦を押さえながら手を震わせる動作を行うため、基準音よりもピッチ位置が上ぶれした青い波形のようなビブラートが基本になります。

一方、声楽や管楽器などでは(これは奏者の個性次第ですが)赤い波形のようなビブラートが多く利用されるようです。

口笛の場合はちょうど楽器と声楽の中間的な位置にあるため、もちろんどちらを利用しても良いのですが、赤い対称波形は安定感、青い波形は緊張感を聞き手に与える傾向があるため、曲の中でこの特性をうまく使い分けると良いでしょう。

上の図とは逆に、基準ピッチに対して下にぶれるようなビブラートはピッチ感が悪いように聞こえやすいため、ピンポイントであっても利用しないほうが良いでしょう。

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