ノンアタック奏法

ノンアタック奏法は以前解説したアタック奏法とは逆に、アタック感を完全に無くすための特殊奏法です。

*アタック感がある=音の出だしがはっきりしていて明瞭であること

口笛の場合、基本的にはブレスコントロールによってタンギングに似た効果を生み出し、音の出だしや区切れを明瞭にしますが、曲によってはオーケストラのストリングスのようにアタック感を完全に無くし、ふわっとした質感を要所に入れることで、深みのある表現を演出出来る場合があります。

*技術的には手法が全く異なりますが、金管楽器でノンアタック、もしくはノーアタックなどと呼ばれる奏法と同様な効果になります。

理論編:波形で見るノンアタック奏法

楽曲での利用例を挙げる前に、ノンアタック奏法を用いた場合の音の波形を視覚的に見てみましょう。

以下は普通にノーマル奏法(パッカー奏法)で吹いたときの波形です。横軸が時間、縦軸がボリューム(音量)を表しますが、音の出だしから最後までが一貫したなめらかな曲線になっていることが分かります。

Normal - コピー

次に、以前紹介したアタック奏法の場合を見てみましょう。出だしに大きな「コブ」がありますが、実はこれがアタック音の正体で、その後、一次減衰(ディケイ, Decay)を経て、持続音(サスティーン, Sustain)へと変化する一連の過程を経ることになります。

アタックディケイサスティーン

そしてここからが今回の本題、ノンアタック奏法です!

以下の波形図ではじめにニョリョニョロとした小さな信号が見えますが、これが音の出だしに相当し、それがシームレスに徐々に大きくなって通常の音量に至っています。波形画像的にはちょうどノーマル奏法を左右反転したような形が特徴になります。このように吹くことで全くアタック感の無い、独特なニュアンスを楽曲に与えることが出来るのです。

ノンアタック

実践編1:ノンアタック奏法を聞いてみよう

理論的な話ばかりではなかなか分かりづらいと思いますので、口笛の楽曲の中でどのように使われているのかを実際に耳で確認してみましょう!

以下のYouTube動画「野に咲く花のように」を再生してみてください。山下清画伯をモデルにした「裸の大将」というドラマのテーマソングとしても有名な楽曲ですが、聴いていただくと3分4秒あたりでノンアタック奏法による独特なニュアンスが使われていることが分かると思います。

もし良く分からないという方は、ヘッドホンなどで聴いてみてください。この楽曲に限らず要所で私はよく利用していますが、独特なニュアンスが感じられるはずです。

実践編2:ノンアタック奏法の吹き方

先ほど紹介した動画ですが、ボリュームを上げて注意深く聞いていただくと、先に息の音だけが聞こえて、徐々に息の音が減り、口笛の音が出てきていることに気がつくと思います。

まさにそれがノンアタック奏法の原理です!

具体的には、ノーマル奏法のときのように、普通に口笛を吹く口の形を維持しながら、先に口笛の音を出さないように注意しながら息だけを吐き出し、息を吐き出すスピードを一定に保ったまま音の成分を増やし、最終的にクリアな音に変化させます。

口笛初心者の音を聞くと、多くの場合音がかすれており、音の中に息っぽさが残る感じがしますが、これを意図的に制御し、息だけの状態→かすれた息っぽい音→クリアな音へとシームレスに変化させます。

もちろん、かすれた音を利用せずにクリアな音だけを利用して、息のスピードを徐々に増やすことで音量をシームレスに上げるという方法でも似たような表現は可能ではありますが、それでは出せない独特なニュアンスがノンアタック奏法にはあります。

ここまでが「ノンアタック奏法」で、ここからが「ノーマル奏法」、さらにここからは「アタック奏法」というように厳密な区切れ目があるわけではなく、これらはその曲に応じて無段階にその程度を調整して利用すべきものなので、あくまで感覚的なものともいえますが、逆に、それだけ奥が深い技術ともいえるように思います。

口笛になれないうちはどの音も一定のアタック感になってしまい、単調さが感じられる演奏になってしまいがちですが、ノンアタック→アタックまでをシームレスに使いこなせるようになれば、幅広い情感、すなわち、優しさ、怒り、苦しみ、喜びなどを口笛で表現することが可能になり、音楽性を高めるのに役立ちます。

このサイトを読んでくれている方の多くはまだ音程が正確に取れないレベルの方であると思いますが、上級者へのステップアップ=音楽的な表現の幅を広げるテクニックとして、是非練習してみてください!

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