特別寄稿:口笛奏者 藤井 直央

この度、くちぶえ音楽院では2015年12月に大阪府で開催された「第7回おおさか国際くちぶえ音楽コンクール」において、15歳という若さにも関わらず見事、最優秀賞を獲得し、口笛世界チャンピオンに輝いた藤井直央さんより特別寄稿を頂きました。

口笛を始めてわずか2年半という短い期間で、長いステージキャリアを有するベテラン勢を抑え、口笛世界一にまで上り詰めた藤井さん。その秘訣はいったいどこにあるのでしょうか?

その答えは・・・以下の寄稿を是非ご覧ください!

藤井 直央/ Nao Fujii

万全ではない状態で迎えた大会予選

藤井 直央/ Nao Fujii僕は今、高校1年生、15歳です。コンクールの12月12日、13日は、期末テストの真っ最中でした。

2次予選の12日は、午前中3教科の試験を受けてから、2時間かけて大阪の守口市の会場に到着しました。

前の晩、遅くまで勉強していたことによる寝不足と、50分×3教科の試験の疲労感、さらにはコンクールという尋常ではない高揚感で、頭が少しぼーっとしていました。

僕の出番は一番最後の50番目でした。演奏が始まってすぐ「ん?なんかへん。喉が乾燥してる。音がいつもみたいに響かへん!速いパッセージが回りにくい…」気持ちだけが焦って何もできないまま、あっと言う間に3分間の演奏が終わってしまいました。

客席に戻ると案の定、母が厳しい顔をしています。「やってもた…」急に不安になりました。
本選の25人に入れないかもしれない…。

実は僕は今まであまり緊張した経験がなく、いつもステージでは練習通りかそれ以上の演奏が出来ていたので、少し大会を「舐めてる」ところがあったのかもしれません。

だからその日も、十分なウォーミングアップやイメージトレーニング無しでいけるだろうと上がったステージで、自分の思い通りの演奏ができないという経験をし、初めてうろたえたのです。

結果は無事2次予選通過、ホッと胸を撫で下ろしました。後で聞いたところによると予選は3位通過だったそうです。

気持ちを切り替えて臨んだ本選

藤井 直央/ Nao Fujii2次予選の失敗があって、翌日の本選では自分の今持っている力を全て出し切るような納得できる演奏をしたいと臨みました。

まずマスクを買い、乾燥から喉と唇を守りました。僕の出番は25人中21番目です。楽屋はもちろん会場ホールが入った建物の中では一切音が出せなかったので、ボイスレコーダーをイヤホンで聴きながらマスクの中で少しだけ音を出しながらの練習とイメージトレーニングを2時間行いました。

ひとつひとつの表現や表情を丁寧に確認していく作業は、気持ちも落ち着き自信も取り戻すことができました。「自分の演奏パフォーマンスを皆さんに見てもらおう」、「楽しんでもらいたい」、そんな気持ちが膨らんできました。

思えば、細部にわたりフレージングや音の作り方、表現を訓練してきました。本選の前夜は課題曲のテンポのことで母とバトル。自由曲の最初のテーマのスタッカートテヌートの長さが上手くいかず、頭を抱えました。半分ふてくされて寝ましたが、朝になるとそれらが全てクリアーに。

本番では楽屋で教えてもらった笑顔も作れ、自分の描いた通り、落ち着いてパフォーマンスができました。

「これで優勝できなくても悔いはない」と、とても爽やかな気持ちでした。

結果発表の時、入賞者が次々に呼ばれ、最後の2人になった時、初めて足が震えました。

最後の最優秀賞で名前を呼ばれた時は、心の中で「やったー!」を叫び、ようやく足の震えが止まりました。

口笛をはじめたきっかけ

泉 民恵/ Tamie Izumi

口笛世界チャンピオン藤井直央の母であり、自身もソプラノ歌手として活躍中の泉民恵さん

さて、僕が口笛の演奏を始めたのは、今から2年半前の13歳の時です。

5歳からピアノを始め小学校の頃はボーイソプラノで歌が大好きだったのに、変声してからはあまり歌わなくなった僕に「音程もいいし、音色もすごく綺麗なんだから口笛をやってみたら?」と母親が勧めてくれました。

音大を出て今も現役の歌手の母から、まず歌のように奏でること、音の最後まで神経を使うこと、様々な音の表情や表現、フレージングやアーティキュレーションなどを学びました。

たとえば、大切なものにそっと触れるような優しい音とか、ボールがバウンドするような跳ね返りのいいスタッカートとか、堂々とした晴れやかなフォルテとか、おどけて可愛らしい表現とか、ハッとして胸がキュッとなる休符などなど…数限りなく。

それらをしつこく何度も何度も繰り返し訓練してきました。

歌のように、フルートのように、ヴァイオリンのように、トランペットのように…。口笛を吹いているだけですが、自分の中では歌や色々な楽器が鳴り響くようになりました。

更なる高みを目指して

今後の課題は・・・

1. もっといい音楽をたくさん聴いて更に色々な表現ができるようになること。

2. 藤井君のはクラシックだ、と言われたポップスを、ポップスに聞こえるよう演奏できるようになること。

3. 「一見易しいと感じても、とてつもなく奥が深くて難しいからまだダメ」と母に言われているモーツァルトに挑戦すること。

また、今年7月のWWCの大会にも挑戦したいと思っています。

口笛を通して、たくさんの方々との出会いがありました。家族のサポートを含め、すべての皆さんに感謝の気持ちを伝えたいと思います。ありがとうございました!

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