特別寄稿:口笛奏者 奥野 靖典

奥野 靖典/ Yasunori Okuno2015年7月11日、ロサンゼルスのパサデナ市内にて開催された口笛音楽の国際コンクール、Masters of Musical Whistlingで総合優勝を果たし、World Championの称号を頂いたことについて、受賞後の所感を寄稿致します。

This article is written in English in the latter half for English speakers.

大慌ての中で迎えた国際コンクール本番

まず、私が出場したのは「音源あり」と「生バンド」の二部門。演奏したのは、浜渦正志作曲、部門順に「Zauberkraft」と「Rosenkrantz」という曲でした。

奥野 靖典/ Yasunori Okuno当初は、同点になった場合のタイブレークを含めて各部門二曲ずつ用意することという規定があり、「音源あり」部門に上の二曲を、「生バンド」部門にアメリカウケを狙ってiPhoneのデフォルト着信音にある「Opening」と「Marimba」のメロディーに乗せてアレンジした口笛を演奏しようと思っていましたが、開催直前に規定が変更されたため、急遽、演奏曲を上記二曲に絞り、生バンド用には楽譜を提出しなければならなかったのでAmazonの即日配達で購入し、スキャンして送り直すという突貫作業を強いられました。アメリカ入国のために必要なESTAの手続も認識していなかったので、それと合わせて作業していたこともあり、なかなか焦りました。

練習時間もあまり取れず、通勤の行き帰りで自宅・勤務先と最寄駅の間を歩きながらCDを聴いて口笛を吹くという、端から見たらかなり変な人に映る方法で練習していました。

開催の前日にリハーサルをした段階では、バンドのピアニストの方も初見の楽譜だったようで、かなり大変そうでした。

勝因その1~ブレスフリー奏法

さて、ここから本題です。以下のとおり、勝因を自分なりに分析してみました。

奥野 靖典/ Yasunori Okuno第一に、奏法。
口笛というのは、息を吐いても吸っても音が鳴るものなのですが、殊、演奏において両方を駆使し、どちらでも音階を高音域から低音域まで上下させ、音楽と呼べるレベルの演奏ができる口笛奏者は多くはいないようです。私自身、これができることを特異だとは認識しておらず、前回の「おおさか国際口笛音楽コンクール」で別の口笛奏者に「いつ息継ぎしてるんですか?」と訊かれて初めて気づきました。確かに他の奏者の演奏を聴いていると、必ずマイクに「ーッ」という息継ぎの音が入り、意識し出すとこれがなかなか耳に障ります。壮大な曲になればなるほど、必要とする空気の量は多くなりますので、一層顕著に。

その点で、私は息継ぎをする必要がないので、今回の大会では、この利点をフルに発揮できる曲を選曲し、さらに生バンド部門の演奏直前、観客に対して次のように言いました。

「実を言うと、私は口笛を吹いている間、一切、息継ぎをしていません。だから演奏中、私の息継ぎに、その点における他の口笛奏者との違いに、注目してもらえないでしょうか」(実際の言葉は英語なので↓を参照してください)

この奏法については終わった後、かなり多くの観客から質問を受けたくらいなので、審査員にも幾分訴求したのではないかと推測します。

この奏法を、他の吹奏楽器ではできない口笛独自の演奏技術としてその地位を確立するため「ブレスフリー奏法」と呼ぶことにしようと思います。
(ウォーブリング奏法が口笛音楽界で流行ったのはネーミングによるところもあると思うので、こういうのは大事です)

勝因その2~選曲(即興による演奏)

奥野 靖典/ Yasunori Okuno第二に、選曲。
今回演奏した曲、するはずだった曲、すべてに共通する特徴があります。何かと言うとそれは、予め決められたメロディーがない、ということです。つまり、即興。

会場で実際に聴いていた方は是非、上記の二曲、「Zauberkraft」と「Rosenkrantz」をiTunes等で検索してみて下さい。私が口笛で演奏していた主旋律とも思えるメロディーは一切流れてきません。なぜなら初めからそんなメロディーは存在しないからです。勝手に私が付け加えました。アレンジと説明していましたが、ほとんど作曲に近いです。ただ、着想は原曲に乗せることを前提にしているという点でゼロから生み出しているわけではないのですが。

もちろん、事前にどういう構成にするかは練習しながら大体固めています。が、今大会に関して言えば、私は両方メロディーを間違え(というか事前に用意していたものとは変わっ)てしまいました。それは緊張や唇のコンディションでMAXの高音域の出が悪かったり、ライブバンドのピアノのテンポや音色が思っていたものと違っていたりしたためです。演奏しながら(相当焦りながら)、途中からメロディーを変え、その場でリズムとハーモニーと全体の帳尻が合うように構成し直しました。つまり、間違えても端からはわからない曲を選んだ(作った)ということです。

明らかにリズムや音がずれるということがない限り(まあ、ずらさないのが難しいんですけど)、私はあの二曲に関して間違えることはありません。ただ、あの大会のあの瞬間に生まれた曲と全く同じものは、二度と演奏することができません。私でさえ、もう覚えていないので。

今、確信しています。これこそが自分のスタイルだと。

この確信と発見こそ、今大会の最大の勝因だと私は考えています。なので、これからは「ブレスフリー奏法」の「即興口笛奏者」として、その可能性をもっと模索していきたいと思っています。

中川大輔さんを偲んで

最後に、2008年の国際口笛コンクールでアレイドアート部門へ私と一緒に出場し、口笛演奏をしながら竹刀を使った殺陣を実演するというパフォーマンスで9位入賞を果たしながら、不幸にも数年前に心臓発作で亡くなった大輔さんについて。

今回の米国滞在中、寝ている間に何度も夢に出てきたなんて、出来すぎた話をするつもりは微塵もありませんが「大輔さんが一緒に来ていたら、もっと楽しかっただろうなあ」と思うことが多々ありました。

少なくとも、彼が生きていたら↓の男同士特有の会話は絶対に繰り広げられていたと思います。(京都と三重の方言で再生して下さい)

奥野 靖典/ Yasunori Okuno「大輔さん、あのコ、やば綺麗ちゃいます?」
「わかる!Mollyやろ?」
「口笛界では滅多にお目にかかれない美人っすよ。千年に一人の天使でしょ、あれ」
「ほんまやなぁ、ええなぁ。ああいうコやったら、国際結婚もアリやんなぁ」
「いや、それステップ飛ばしすぎですってww」
「なんでーさ。だって、やす、あの子と結婚したらやな、生まれてくる子ォ、絶対、ベッキーなるで」
「いや、あれはどっちかっつーと、トリンドルの方ちゃいます?」
「あそっか。でも俺、ベッキーの方が顔のタイプとしては好きやな」
「ええ〜? マジすか。僕、絶対トリンドルすわ」
「やすとは、ほんまに好み違ってよかったなぁ」
「ちょ、大輔さん、やばいす。Mollyの友達にモデルがいます!モデルが!」
「うわー、脚長っ! あれはでも、やす、無理やで…」
…間違いありません。
大輔さんとなら、きっと、もっと、面白かったに違いありません。
今みたく勝てたかどうかはわかりませんが。

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Message from Yasunori OKUNO

奥野 靖典/ Yasunori OkunoJuly 11th, 2015, I got the Grand Prize of Masters of Musical Whistling, held in Pasadena, LA. Here I’m going to tell you the winning speech.

First of all, the divisions in which I participated were “Pre-Recorded” and “Live-Band”. The pieces I played were “Zauberkraft” and “Rosenkrantz” composed by Masashi HAMAUZU.

Here shows the reasons for my acquisition of the Grand Prize, which I estimated by myself.

Cause of Victory 1: Breath-Free Whistling Method

奥野 靖典/ Yasunori OkunoOne is Whistling Method.
Generally, we can whistle with both breathing in and out. When playing pieces of songs, however, many whistlists can’t totally control their pitch from the highest to the lowest with breathing in and switching “in” and “out” to play music to the extent of artistry.

I wasn’t conscious of this difficulty because I have been doing as a matter of course, but my friend whistlist made me aware of this advantage by asking me, “When did you take breaths while you were whistling?”, after I performed in the previous “Osaka International Whistling Music Contest”.

In fact, other whistlists often take breaths and make noises of breathing in, and get my ears a little bothered. The more magnificent their play is, the more air is needed.

I chose the pieces which could make the best use of this advantage that I didn’t need any breaths and declared right before my performance began, “To tell the truth, I don’t need any breaths as long as I am whistling. So, would you please pay attention to my breaths and the difference from other whistlers?”

After I got the prizes, many audiences asked questions about this method, so that the judges may be appreciate for the difference, too.

I name this method “Breath-free Whistling” (like Warble whistling), in order for this method to be acknowledged as one of skills which is original for whistling.

Cause of Victory 2: Choice of Songs (Improvisation)

奥野 靖典/ Yasunori OkunoThe second is Choice of Songs.
The similarities of the pieces I chose are: their melodies were not completely decided until played, which means they were improvisation.

Audiences who actually listened to my play, please find “Zauberkraft” and “Rosenkrantz” from iTunes or Apple Music, and listen those. You will never listen the melodies like I played because I even composed those melodies for myself at that time. Of course, I fixed the outlines in advance while practicing, but I mistook, or changed the plan, in this MMW. While playing (feeling embarrassed), I extemporaneously changed the melodies, arranged the rhythm and balance, and reconstructed the conclusion. That means I chose (composed) the songs which nobody could point out if I made mistakes. So, you can’t listen the same melodies any more because I even don’t remember how I played.
I assured myself that this is my style which led me to the victory.

From this time, I am going to develop my career as “Breath-free improvisational whistlist“.

Best friend: Daisuke

Lastly, let me talk about Daisuke, my best whistlist friend, who got the 9th place with me in Allied Art Category of IWC 2008 and suddenly passed away in 2012.

I am not going to tell you any fantastic stories like he would come into my dreams at every night during my stay in LA, but quite a few times I thought this way, “If he were alive here, it might be more fun and exciting.”

奥野 靖典/ Yasunori OkunoAt least, we should have made men’s conversation in Kyoto & Mie dialect, like:
“Hey, Daisuke, that girl is absolutely pretty, isn’t she?”
“Oh, I knew it! You’re talking about Molly, aren’t you?”
“Definitely. She is a beauty of Millennium of whistling world.”
“I agree. She’s pretty. Makes me thinking about international marriage.”
“Huh? You’ve jumped too many steps.”
“Why not? If I got married with her, we would be given a child like Becky (a half celebrity in Japan).”
“I don’t think so. I bet Trindle (another half celebrity) in case of her.”
“mmm… but I like Becky better.”
“Really? I never hesitate to get Trindle.”
“It’s good for us to taste different.”
“Wait, Daisuke. Molly’s friend is even more beautiful like a model.”
“Oh. my goodness! Very nicely long legs! But we can’t even talk to her…”
R.I.P.

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