優勝記念インタビュー:口笛奏者 YOKO

 2018年5月、神奈川県で開催された「口笛世界大会2018 (WWC2018)」において、見事、初出場にして優勝の快挙を達成したYOKOさんにくちぶえ音楽院が対面インタビューを行いました。

 天使のようなビジュアルと圧倒的な音楽性で世界の口笛関係者を魅了したYOKOさんとはいったいどんな人物なのか、その謎にも迫りました!

大会初出場の女性が口笛で世界一位を獲得!

(くちぶえ音楽院 鳥鳴響)優勝おめでとうございます!口笛の国際コンペにおいて近年日本人による連覇が続いていますが、今回も改めて日本の口笛水準の高さが世界に証明される結果となりました。現在の率直な気持ちをお聞かせください。

(口笛奏者 YOKO)本日はこのような機会を頂きありがとうございます。くちぶえ音楽院の記事は以前から参考にさせて頂いていましたので、是非一度、鳥鳴響さんにはお会いしてみたいと思っていたんです。私もまさか優勝するとは思っていなかったので驚いているというのが正直な気持ちです。一方で、口笛世界一の奏者として果たさなければいけない責任・役割もあると思いますので、プレッシャーや不安も感じはじめています。

ーー口笛の国際大会においては慣例として男女を分けた評価がなされることが一般的でしたが、今回は時代の変化に合わせた新たな試みとして、男女のカテゴリー分けが撤廃されました。その中で女性が優勝したということは口笛の歴史上も非常に意義が大きいように感じます。

私もなんとなくですが、同列に評価した場合は男性のほうが上位に入りやすいようには感じていました。その上で、男性奏者に多いテクニカルな奏法で真っ向勝負するのではなく、女性的な柔らかさを表現できるように意識して練習を重ねてきました。

何よりお酒とゲームが大好き!

ーー無名の奏者が突如登場して、いきなり優勝してしまったような印象を持っている口笛ファンの方は少なくないように思います。そこでまずはYOKOさんという人物について、簡単に自己紹介をお願いします。

そうですね・・・一言でいえば、「お酒を愛する口笛奏者」です(笑
出身が日本一の酒豪県である秋田ということもあり、成人後すぐにお酒を飲み始めて、ビール、日本酒、ワイン、それからピート臭が強めのウィスキーなんかもいけます。同世代の女性は酎ハイ・サワーを好む方が多いのですが、私はそのお酒が持つ本来の味わいをそのまま楽しみたいので、ストレート、ロックのような飲み方が好きです。

ーー本当にお酒がお好きなんですね(笑 このままいくと、お酒の話題だけで取材が終わってしまいそうなので、音楽的な側面についても教えて頂けますか?

私には音大を目指していた10歳離れた姉がいます。その影響でクラシックを聴く機会も多く、幼少の頃から音楽が生活に溶け込んでいたように思います。私もピアノを6歳から始め、中学校では吹奏楽部に所属してトランペットを吹いていました。

ーー口笛奏者で上位の方は元トランぺッターという方が多いのですが、YOKOさんも例外ではないのですね。お姉さんの影響は他にもあるのでしょうか?

ゲーム好きなところですね。
先ほどお酒の話をしましたが、実はゲームも同じくらい大好きで、聖剣伝説、ファイナルファンタジー、クロノトリガーなど、特に80年代後半のゲームにはまっていて、今でもプレイを楽しんでいます。ゲーム音楽に関連した大規模イベントが開催される際もほとんど足を運んでいます。ゲーム音楽業界の中で、口笛奏者としての立ち位置を見つけることが目下の目標です。

ーーなるほど。ゲーム音楽はフルオーケストラ形式の本格的な演奏会が催されるなど、その音楽性の高さが世界的にも注目されている分野なので、とても興味深いですね。ところで、現在、お仕事は何をされているのですか?

芸能プロダクションの「MURASH」に所属しています。最近ではエフエム愛知の「金築卓也と音人の時間」に出演させて頂いています。口笛の話題を盛り込んだトークやセッションにも参加していますので、受信エリア外にお住まいの方にもradikoで聞いていただけたら嬉しいです。

5歳から口笛を吹き始め、中学で3オクターブの音域をマスター

ーそれではYOKOさんが口笛に出会ったきっかけについて教えてください。

5歳ごろから意識せずに口笛を吹いていました。色々な音楽に合わせて吹いているうちに自然と音域も広くなり、中学生の頃には3オクターブの音域を自在に吹くことが出来る程度にまで上達しました。特に意識して練習してきたというよりは、気が付いたら吹けるようになっていた感じです。

ーー中学生で3オクターブは素晴らしいですね。一般の口笛と、いわゆる「口笛音楽」の間には大きな隔たりがあるように思うのですが、後者を意識されたのはいつ頃ですか?

口笛で音楽的な表現が出来るということを知ったのは、偶然見たテレビ番組で口笛奏者の分山貴美子さんが取り上げられていたことがきっかけです。特に、番組の中で3オクターブの音域が出せることが注目されていたのですが「あ、それなら私も出来る!」と思ったことが本格的な口笛の練習をはじめる動機になりました。

日々の練習はカラオケボックスで

ーー技術を向上させるためには、粘り強い練習が不可欠と思いますが、どのような環境でトレーニングを重ねたのでしょうか?

口笛は時に他人の耳に障ることがありますので、自宅で練習する際は周囲の迷惑にならないよう小さな音量で練習するように心掛けていたのですが、小さな音ばかりで練習していると音楽的に重要となる太い音ではなく細い音に慣れてしまうデメリットがあることに途中で気が付きました。

そのデメリットに気が付いて以来、カラオケボックスで練習するようにしているのですが、遠慮せず常に大きな音で吹く習慣がついたお陰で、自分でも実感できるくらい太い音が普通に出せるようになりました。

ーー多くの大会出場者はテクニックにこだわり過ぎているように私も以前から感じていましたので、YOKOさんのように口笛の「音色」の重要性を理解して、それを積極的に向上させる努力を重ねることが何より大切だと私も思います。大会に向けた特別なトレーニングはされたのでしょうか?

ステージ上で100%の力を発揮することは現実的に難しいので、過酷な状況下でもきちんと安定した口笛が吹けるようになるトレーニングメニューを考え、実践してきました。例えば、山を登りながら空気の薄い環境で口笛を吹いたり、ダンベルを持ちながらロングトーンの練習をしたりです。この練習によって口笛の音の安定感を高めることが出来たように感じています。
あとはとにかく自分の口笛を録音して自己反省、改善して、また録音、というサイクルを徹底的に繰り返しました。大会直前には分山貴美子さんに加え、青柳呂武さんにもアドバイスを頂きました。

ーーなるほど、くちぶえ音楽院「上達のコツ」にも記載していますが、やはり自分の音を客観的に捉えて改善するためには、録音や他の奏者からの助言が不可欠ということでしょうね。

半年がかりで行った伴奏制作

ーーそれではここから口笛大会に特化した内容について伺ってみたいと思います。予選では、涙のアリア(クラシック部門)、リベルタンゴ(ポピュラー部門)、決勝では、パスピエ(クラシック部門)、若者たち(ポピュラー部門)をそれぞれ演奏されていますが、選曲のポイントについて教えてください。

サラ・オレインさんの大ファンなので、彼女がカバーしている「涙のアリア」と、「若者たち」は口笛で吹いてみたいと以前から思っていました。「リベルタンゴ」は以前あるバーに飲みに行った際に初めて聞いたのですが、その斬新な音楽が忘れられず今回選曲させて頂きました。「パスピエ」はドビュッシー作曲のベルガマスク組曲の第4曲という位置付けで、一般には第3曲の「月の光」のほうが有名なのですが、演奏難易度やほかの奏者との重複可能性なども考慮し選択しました。

ーー「パスピエ」は半音の使い方が独特で、口笛で吹く場合には正確なピッチをキープしづらい演奏上の難しさがあると思いますが、世界大会で優勝を狙う上で結果的には良い選曲だったのでしょうね。伴奏は自作したものですか?

はい、実はそこが一番苦労したところで、DTM(デスクトップミュージック)による製作で、完成までに約半年を要しました。伴奏制作はとても大変ですが、既成の伴奏を利用するのと違い、独自のアレンジを加えたり、自分が得意とする音域に移調することも出来るので、口笛の実力をフルに発揮するためには自分で制作することが最善と考えました。

ーー確かに、出場者の中には明らかに曲の調が音域にマッチせず、実力を発揮しきれていない方が毎年必ず一定数いらっしゃいますので、勿体ないですよね。とはいえ、半年もの努力があったとは感服致しました。

大会当日、実はお酒の力を借りちゃいました・・・

ーーそれでは、半年越しの伴奏を以って挑んだ大会当日について伺いたいと思います。舞台の上ではあまり緊張もせず、終始リラックスされていたように見えましたが、実際のところはどうでしょうか?

とても緊張しやすいタイプなので、実はステージに上がる前に、お酒の力を借りてしまいました。ある種のドーピングですね(笑
くちぶえ音楽院の記事で、田所さんが「空腹で本番に臨んだほうが良い」と言っていましたので、それを素直に受け止めて、ちゃんと空腹で飲酒するようにしましたよ!

ーーYOKOさん、それはさすがに、田所さんが伝えたかった意図とはちょっと違うかと(笑

そうなんですか(笑
でも、お陰様で、ステージ上では全く緊張すること無く、本当に楽しい時間を過ごすことが出来ました。

ーー確かにアルコールのリラックス効果は口笛演奏に意外と有用かもしれないですね。ステージ上で見せた満面の笑みも観客には好印象だったと思います。他に何か意識したことはありますか?

私は音楽的な完成度を追求して難しく考えるよりは「音楽そのものをまずは自分が最大限楽しんで吹く」ことが何より大切だと思っています。そのような意味で、ミスを恐れず、とにかく一生懸命楽しく吹くということを意識しました。

プロの口笛奏者として

ーーYOKOさんにとって、口笛とはなんでしょうか?

お酒と同じで、ご機嫌の源です!「幸せの楽器」それが口笛だと思います。

ーー今後の活動について教えてください。CDリリースなどは計画されているのでしょうか?

今のところCDリリースは考えていません。それよりはむしろ、様々な分野のアーティストとコラボレーションして、口笛として本来あるべき立ち位置を模索したいと考えています。必ずしも主役にこだわらず、お弁当に添えられる「お漬物」のように「いい味」を出していきたいです。

ーー今後のご活躍を期待しています。それでは最後に、これから口笛をはじめようと思っている方々に向けて一言お願いします。

口笛の場合、潜在的に高い能力を持ちながら表に出てきていない方は私のほかにも沢山いると思いますので、少しでも可能性があると感じたら、練習を重ねて大会に挑戦してみてください。
何の道具も使わず自分の体から生み出される口笛という幸せの楽器を信じて吹き続ければ、必ず上達して好きな曲を自由に吹ける日がやってきます!

関連リンク≫口笛世界大会2018の概要と結果