フラッター奏法は同じ音を連続して高速に発音することが可能な口笛の特殊奏法で、トレモロ奏法、または、フラッターツンゲ奏法とも呼ばれます。
技術難易度が極めて高い口笛奏法の一つといえますが、習熟することによりトレモロサウンド特有の音楽的表現を口笛で実現することが可能となります。
フラッター奏法を聴いてみよう
フラッター奏法がどのようなものなのかを知るために、まずは以下の動画をご覧ください。
昔の電話の呼び出し音のような独特なサウンドですが、息のコントロールだけでは実現不可能な表現であることが理解頂けたかと思います。
口笛におけるフラッター奏法
フラッター奏法自体は、管楽器奏者の間では割と有名な特殊奏法で、私も(口笛だけでなく)トランペットを吹きますが、これまで何度か楽譜の中でflz.、flt.といったフラッター奏法の指示を見かけたことがあります(楽譜によってはトレモロ記号で示される場合もあります)。
トランペットなどの管楽器におけるフラッター奏法は、イタリア語の発音に良く見られる「巻き舌」を応用した方法を基本とし、トゥルルルルルル・・・というように舌の先を震わせながら吹くことで、先ほど紹介したような独特なサウンドを生み出すのが一般的です。
しかし、口笛の場合は、そもそも舌で口内の空間を制御することによって音を生み出し、音程もコントロールしているため、同様な方法で音を出すことは原理的に不可能です。
では、どうすれば口笛でフラッター表現が可能となるのか?
口笛でこの奏法をマスターした奏者は数少なく、口笛でもフラッター表現は可能であるということ自体は専門家の間では良く知られていましたが、その原理や手法については長い間、謎とされてきました。
くちぶえ音楽院では以下に、この奏法の正しい原理と習得法について詳しく解説したいと思います。
フラッター奏法の原理と方法
先に、結論から書きますが、口笛におけるフラッター奏法では、実は、舌の先ではなく、舌の中央~奥側を広く使って、巻き舌と同じような振動を作り出し、トレモロサウンドを生み出しています。
舌の先端はノーマル奏法と同様に、下の前歯の中央付近に付けて固定しますが、舌を可能な限り脱力し、上あごに通常よりも舌全体を近接させるようにして強く息を吐き出すことで、舌の中央~奥が空気によって振動し、それによって息が細かく途切れ、フラッター独特のサウンドが得られる、というのが口笛におけるフラッター奏法の発音原理になります。
すなわち、管楽器のフラッターと音の特徴は良く似ているのですが、発音方法としては実は全く異なっています。
かなり特殊な口内の環境を準備して音を生み出す必要があるため、ノーマル奏法のように3オクターブにわたる広い音域を全てフラッターで演奏することは極めて難しく、音量に関しても息が強すぎると舌が振動することによって生ずるノイズが強くなりすぎるため、音楽表現における実用上の限界が存在します。
練習してようやく音が出せるようになっても、当面はかなりノイズの多いサウンドしか出せないと思いますが、技術的に習熟すれば、先ほどの動画のように、クリアーなトレモロサウンドを生み出すことが出来るようになります。
他の管楽器同様、口笛でもトレモロ奏法を使う機会はかなり限られますが、器楽曲をカバーする際に、フラッター指示が譜面上にある場合には必須の技術であり、また、この奏法でしか出せない独特な音楽表現もあるため、余力があれば習得しておくと良いでしょう。