特別寄稿:口笛奏者 青柳呂武

世界トップクラスの口笛奏者はどのような気持ちで口笛と向き合い、如何にして高い技術を身につけたのか、それは口笛の上達を目指す誰もが一番知りたいトピックでしょう。

今回、くちぶえ音楽院では、先日、日本で開催された第41回 国際口笛大会(IWC2014)、男性部門で見事優勝という快挙を達成された青柳呂武さんから特別寄稿を頂きました!

是非以下の記事をご覧頂き、口笛上達の参考にしてみてください!

青柳呂武

楽器としての口笛

青柳呂武口笛音楽の歴史は浅い。昔は口笛の演奏には限界があったからである。すなわち、マイクで音を拾って拡張したりといったことがまだできなかったため、音が小さい口笛は楽器としては軽視されてきた。西洋の古典音楽に口笛が扱われた例は聞いたことがない。

しかし現在は科学技術の発達により音の拡張はいくらでもできる。それによりポピュラー音楽等でしばしば口笛が楽器として扱われるようになってきた。

ポピュラー音楽とはまさに大衆のための娯楽の音楽。体一つで音を奏でる純粋な楽しさ、運指を覚えなくても鼻歌感覚で好きなように歌える楽しさ、技術を磨いて複雑な旋律も演奏できるようになった時の達成感。色々な楽しさを口笛は教えてくれる。

口笛に魅せられて

かく言う自分もそんな口笛のシンプルな楽しさに魅了された一人である。2人の兄の影響でバイオリンを5歳から始めたのだが、同時にこれまた2人の兄の影響で口笛も吹き始めた。

その後ピアノもホルンもオーボエも…数々の楽器を経験した。しかし思い返してみれば最も頻繁に演奏していたのは、何の準備もいらない口笛だった。作業するときも勉強するときも遊ぶときも、兄弟揃って口笛を吹いていた。

何が言いたいかというと、始めるきっかけとか練習とか、こんなもんで良いということ。意気込んで「練習しよう」と考えなくても、まずは日頃の鼻歌を口笛にちょっと変えてみれば次第に口笛は上達する。

一応これは口笛を始めようと考えている方〜始めて間もない方に向けて書いているつもりなのでこのような書き方をしたが、もちろん口笛を極めることを強要してはいない。鼻歌を極めてみるのも面白いかもしれない(笑)

大事なのは毎日楽しんでやることだなあと、それだけが本当に一番の上達の鍵だと確信している。

口笛上達のポイント

さて、ここからは少しレベルの高い演奏を目指す方に向けた話になるので、そうではない方は読まないほうが良いかもしれない。

自分は今でも勿論口笛を楽しんでいるが、自分ではなく他人を楽しませる演奏をするには、それなりに音程やリズム等の基本的な部分が一定の水準に達してなければならない。そういったことも意識しながら練習をしている。自分が練習の時に特に意識してきたのは

頭の中の音を、「歌う」つもりで吹く
(どの楽器にも言えること)

出してる音を直接頭で確認するのではなく、空気を介して確認する
(簡単に言えば、自分の音を客観的に聴くってこと)

口笛は思った以上に音程がずれているので、「こんな感じの音が出ているだろう」という推測だけで吹くのではなく、その音がどう鳴っ”た”かをしっかり確認する。

機材が揃っているなら録音するのでも勿論良い。

幅広い奏法を習得し最適な音楽表現を!

青柳呂武更にハイレベルな演奏を目指す方向けの話をする。自分の強みは低〜中音域と発音のレパートリーだと思う。逆に苦手なのは高音である。

口笛は基本音域が高いので、その高さを活かして高音を練習して伸ばすのもアリだと思う。しかし、あまり高い音になりすぎるとせっかくの口笛の音の柔らかさが損なわれてしまいやすい(大会では超高音域を超綺麗に演奏している方もいたが)。

そうなるとモスキート音のように耳をつんざく音になってしまうこともある。どんな楽器をするにしても、その楽器の特徴を活かして演奏することが重要である。

この話は音域だけではなく、奏法にも当て嵌まる。口笛には特殊奏法と言われるものがいくつかある。ウォーブリングやリッピング等である。

特殊とは言われるが、今やこの奏法が使える奏者は数え切れないほどになり、もはや一般的な奏法として地位を確立してきたと言っても過言ではないだろう。これらの奏法が重宝されている理由は、第一に速い複雑な旋律が吹けるからである。

しかしもう一つ重要なのは、これらの奏法にはそれぞれ発音に違いがある。一つしか使えなかったら一つの発音しかできない。これらをいくつも習得してそれぞれの特徴を活かした使い分けをすることで、幅広く且つより適切な音楽表現が可能になる。

しかし最後にもう一回言おう。毎日楽しんで吹くこと。最も馬鹿馬鹿しく、最も大事なことである。

口笛が上手くなりたいと思っている方に少しでも参考になることがあれば、この上なく喜ばしいことである。