口笛の音程のとり方~原理と練習法~

口笛の音程コントロール方法

このページでは、どのようにすれば口笛の音程を自由自在にコントロールできるようになるのかについて解説します。

口笛は、他の楽器とは異なり、機械的な仕掛けが一切無く、歌を歌うのと同様に、微妙な筋肉の動作によって音程をコントロールする必要があるため、音を出すだけであれば比較的簡単ですが、正確に音程やピッチをコントロール出来るようになるためには、長期間に及ぶ練習が必要になります。

しかし、予め原理や方法を理解したうえで、効率良く練習すれば、比較的短期間での習得が可能です。そこでこの講座では、音程制御の基本原理とそのコツ、練習法について紹介したいと思います。

口笛の音程は舌の動きで制御

今回は、口笛の音が出せることを前提に話を進めます。口笛の音をまだ出すことが出来ないという方は、先に以下のレッスンをご覧ください。

さて、口笛で楽曲を演奏する「口笛音楽」の世界を楽しむためには、音が出せるだけでなく、音程も正しく取れることが前提として必要となります。

また、他の楽器とは異なり、口笛の場合は上手な人の演奏をいくら動画で観察しても、口の中がどのようになっているのかまでは分からず「技術を見て盗む」ということが、他の楽器に比べ極めて難しい特性があります。

そのため、口笛奏者はどうやって自由自在に音程をコントロールしているのか不思議に思う方も多いようですが、実は、口笛の音程は基本的に舌の動きで制御しています。

つまり、口笛奏者の舌は、演奏中、音程を正しくとるために、常に忙しく動き続けているのです。

音程制御の基本原理

口笛に限らず、どの楽器も音程制御の基本原理はすべて同じで、音の高低は容積に反比例するという自然法則に従っています。

例えば、小学校で習ったリコーダーを思い出してみてください。

リコーダーで低い音を出すためには、たくさんの穴を塞いで管の実質的な長さを長くし、逆に、高い音を出す場合には上のほうだけを塞いで管の実質的な容積を小さくします。

また、低い音を奏でるコントラバスはとても楽器のサイズが大きく、一方で、小さなバイオリンは高い音が出ます。

つまり音程は容積(または長さ)に反比例し、容積が大きいほど音程は低くなり、容積が小さいほど音程は高くなる、という基本的な物理法則があることを覚えておきましょう。

口笛で音程をコントロールする方法

口笛は、下の前歯に舌の先端を接触させた状態で息を吐き出し、音を作りますが、その舌の先端の位置をわずかに上下させることで、音程を変化させることが出来ます。

すなわち、上に移動させることで口内部の空間(容積)を小さくして高い音を作り出し、逆に、舌の位置を下へ移動させて口内の空間を広げることにより、低い音を作りだすことが出来ます。

超低音や特殊奏法などの例外はありますが、基本的に舌の先端を上下させるだけで、必ず舌の先を下の前歯の裏(中音域)、またはその延長線上の歯茎(低音域)、下唇の裏(高音域)に常に接触させておく必要があります。

ここまでの説明で原理はある程度理解できたと思いますので、ここから具体的なレッスンに入ります。

まずは、下前歯の中央に舌を当てて、くちぶえの音を出してみてください。そしてそのまま音を出しながら、舌をゆっくりと下前歯の先端のほうに移動させてみましょう。

音程が舌の移動に伴って、滑らかに高くなったかと思います。


 

もちろん、実際には最初からこんなにうまくはいきませんが、この段階では音が高くなる感覚がつかめていればOKです。

さて、今度は逆に、音を出しながら舌をゆっくりと下の前歯と歯茎の境目に向かって降ろしてみましょう。音程が舌の移動に伴って低くなることが分かると思います。

 

このように、舌の先端の位置を上下させ、空気の通る空間の大きさを変化させることで口笛の音程を制御することが出来ます。

実際に試して頂くと分かるとおり、舌の位置の極めてわずかな変化で大きく音程が変化するため、狙った音を正確なピッチで、さらに正確なタイミングで発音出来るようになるためには、かなりの訓練が必要です。

ただ、ここで紹介した原理とコツを踏まえれば、次に紹介する地道な練習によって、誰でも自在に音程をコントロール出来るようになれます。

MEMO

厳密にいうと、舌の先端の位置を固定していても、舌の真ん中を上方へ押し上げることによって、空間容積を小さくし、音を高く変化させることが出来ます。

また、頬を内側に引き寄せるようにすることで容積を小さくし、音程を高く変化させることも出来ます。

口笛奏者であっても演奏時にひとつひとつ意識するようなことはありませんが、特に、超高音、超低音は、これらの複合的な筋肉の動きによって生み出されています。

自在に音程をコントロールするための練習法

正確に音程を捉え「音楽的に」口笛を楽んで頂くためには、チューナーを使った練習がお勧めです。

チューナーの基準音を口笛で吹き(ロングトーン)、チューナーのメーターを中央で安定させるという極めて単純な練習です。

チューナーには様々な種類がありますが、半音単位でピッチ計測ができるクロマチックタイプで、視認性の高いアナログ針を備え、更に、正しい音程を鳴らすことが出来るSound機能の3点が揃った、以下のような製品が練習にはお勧めです。

口笛はもともと、ビブラートのかからないごくシンプルなロングトーンを、一定の音量とピッチで正確に吹き続けることが技術的に難しいため、毎日練習してもなかなかうまく制御出来るようにはならないかと思います。

ただ、めげずに頑張れば、一カ月ほどで、数秒程度の長さであれば、最初から最後までメーターを安定させることが出来るようになり、更に練習を継続することでより長い時間、より正確に音程を保つことが出来るようになり、口笛の基礎力が向上します。

このような基礎が無いと、早いパッセージは誤魔化しながら吹けても、ゆったりとした童謡を口笛で音楽的に演奏するようなことは出来ません。

口笛の音を、一定の音量・音程(ピッチ)で安定させるのは、最初は非常に難しいと思いますが、口笛音楽の基礎として非常に重要な要素になりますので、あきらめず、毎日習慣として練習するようにしましょう。

6 COMMENTS

sino

私のことではないのですが、今まで美しく出ていたメロディーの一番高い音が何故か出せなくなったという話しを聞きました。75歳の男性です。
どんな理由が考えられるでしょうか?。やはり、年齢なのでしょうか?。
また、美しい声と美しい口笛は比例するものなのでしょうか?。

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鳥鳴 響

sinoさんへ

ご訪問ありがとうございます。
加齢によって徐々に高音が出しづらくなるという現象は、歌唱においては一般的かと思いますが、口笛ではそれほど一般的ではないように思います。
ただ高齢になることで、歯列が乱れたり、筋肉が衰えることなどによって高音を出すために必要な十分な息の流速が出せなくなり、結果として、若い時ほどは、高音も、音量も、出しづらくなるということはあり得るかと思います。

次に、「美しい声と美しい口笛の関係」についてですが、これは、音を出す原理が全く異なるので、直接的には関係しないように思います。ただ、口笛がうまい人は、基本的に、音感が良い(厳密には、音程のズレに関する感度が高い)ので、(声質が美しいかどうかは別として)口笛が上手な人は、歌も上手い人が多いです。

鳥鳴響

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高校生

高校の調べ学習で、前から気になっていたなんで口笛が鳴るのか、どうやったら音程が変えられるのか、をテーマに調べて、くちぶえ音楽院にたどり着きました!
思っていたよりも奥が深く、書くことには困らなさそうです。
上達するには至難の業っぽさそうで、でも音程を変えられるようになって知り合いに披露できるくらいまではがんばってみようと思います!

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鳥鳴 響

高校生さんへ
こんにちは。ご訪問ありがとうございます!
参考となる情報が見つかったようでなによりです。
実際に技術を習得するためには、それなりの時間を必要としますが、継続すれば継続した分だけ上達すると思いますので、是非頑張ってみてください!
鳥鳴響

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Yamamie-chan

はじめまして 少し前から、口笛を良く吹いてますが、高い音を出すのが、難しいです。
コツを教えて頂きたいです。

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鳥鳴 響

Yamamie-chanさんへ
こんにちは。ご質問ありがとうございます!
高音の出し方については、以下が、参考になるかと思います。
「口笛の音域と高音の出し方」
https://torinaki.com/high-tone/
基本的に、口笛に限らず、どの吹奏楽器にも言えることですが、超高音や超低音を安定的に出すためには、相応の訓練と、練習時間が必要になります。
短期間でマスター出来るものではないので、上記URLを参考にしつつ、粘り強く練習に取り組んでみてください。
鳥鳴響

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