ビブラートとポルタメント

ビブラート徹底解説

このレッスンでは、音楽的に口笛を表現するための必須テクニックである「ビブラート」と「ポルタメント」について、基礎から応用まで解説します。

この2つをマスターし、巧みに組み合わせることで、音楽的表現力が飛躍的に高まり、情感豊かな演奏が可能となります。

ビブラートとポルタメント

ポルタメントとは、音程を連続的に変化させ、別の音程に繋ぐための演奏技術です。

 

ポルタメントは以下の講座ですでに解説したとおり、音を出しながら舌の先端の位置をわずかにスライドさせ、口内の容積を変化させることで、容易に実現することが出来るため細かい解説はここでは割愛します。

口笛の音程コントロール方法口笛の音程のとり方~原理と練習法~

一方、ビブラートは、音を連続的かつ規則的に変化させることで音程や音量に揺らぎを生み出し、曲に奏者の情感を与える上で非常に有用な演奏技術ですが、技術的な難度は高く、美しいビブラートを自在に掛けられるようになるまでに年単位の練習が必要となります。

ビブラートとポルタメントを混同している方が多くいますが、ポルタメントは音程の変化量が大きく、方向性があるのに対し、ビブラートはある音を基準とした方向性のない「揺らぎ」である点が大きく異なります。

ビブラートとポルタメントの違い

  • ポルタメント
    ある音から別の音へ、ピッチ(音程)を滑らかに変化させながら移るための技術
    一方向に音が変化するのが特徴
  • ビブラート
    ある音を基準として一定周期の変化、すなわち「揺らぎ」を与える技術
    方向性が無く、基準音を中心とした振幅であることが特徴
    変化(振幅、揺らぎ)の対象により音程、音量、音程と音量の3つのタイプに大別される

ビブラートは大別すると3種類のタイプがあり、さらに振幅の「速さ」「深さ」「ピッチ位置」の3つの要素を巧みに組み合わせにより、その楽曲に合った無限のバリエーションを生み出し、コントロールすることが出来ます。

プロの口笛奏者であってもビブラートを正しくコントロール出来ている奏者は少なく、決して簡単とは言えない技術ですが、時間をかけてじっくりとマスターする価値は十分にあります。

ビブラートを体系立てて正しく理解するため、ここから一つずつ、順を追って解説したいと思います。

音程ビブラート

一般に、狭義のビブラートは、ここで紹介する「音程ビブラート」のことを指します。

ボリュームは一定で、ピッチ(音程)のみが基準音を中心として上下に揺れるのがこのビブラートの特徴です。

言葉だけでは分かりづらいと思いますので、まずは以下のサンプルを聴いてみましょう。

 

良く聞きなれた「自然なビブラート」という印象を持つ方が多いかと思います。

音程ビブラートは後述する「音量ビブラート」に比べ技術的難易度が高く、正確にコントロールすることが難しい技術ですが、どのような楽曲でも利用することが出来、適切にスピードと深さをコントロールすることで、バリエーションを無限に拡大することが可能です。

そのため、口笛で繊細なニュアンスを表現し楽曲に情感を与えるための手段として、最も有用な技術のひとつといえます。

音程ビブラートの練習方法

最初のうちは前に解説したポルタメントをベースとし、ひとつひとつの揺らぎを意識しながら、ゆっくりとポルタメントの上下を繰り返すイメージで練習しましょう。

 

何度も練習して十分に慣れてきたら、徐々に速度を早くして、正しい音程ビブラート(=速度や深さを自在に制御できるビブラート)を習得するための練習に移ります。

ビブラートを習得する上で最も注意すべきことは「速度が正しく制御されていないビブラートは逆に不快感を与えてしまう」ことです。

ちりめんビブラート」という言葉がありますが、細かく痙攣するようなビブラートは音楽的に未熟で不安定な印象を与え、口笛の場合はほかの楽器に比べ音程が高いことも関係して、不快な音として感じられやすい傾向があります。

悪い例として、以下のサンプルを聴いてみてください。

 

感じ方はひとそれぞれですが、ビブラートの周期が非常に早く不安定なため、この音を「心地良い音」と感じる方は非常に少ないのではないかと思います。

特にゆったりとした楽曲では、ビブラートの周期もゆったりと遅くし、早い楽曲ではやや早くするなど、楽曲に馴染むよう意識してコントロールするようにしましょう。

より高度な音程ビブラートについては、この後の応用編で改めて詳しく解説します。

音量ビブラート

前のセッションで音程を変化させるビブラートについて学びましたが、ここでは、音程(ピッチ)は一定で、音の大きさ(音量)を周期的に変化させる「音量ビブラート」について解説します。

「音程ビブラート」がややクラシカルなニュアンスを持っているのに対し、「音量ビブラート」はマイケル・ジャクソン、宇多田ヒカルなどが歌唱テクニックとして多用していることからも分かるとおり、ロック、R&Bなどのモダンな楽曲で情感を表現するのに適しています。

まずは口笛における音量ビブラートのサンプルを聴いてみましょう。

 

ピッチは一定なのですが、音量に一定の揺らぎがあり、ちょうどボールがバウンドするような、音程ビブラートとは全く異なる表現であることが理解できたかと思います。

これを情感表現の技術として楽曲演奏に用いることで、切ない気持ち、哀愁、儚さなどを表現することができます。

さて、なぜ「音程ビブラート」が古くから確立された技術として存在するのに、後から「音量ビブラート」が発展してきたのかについては、音楽史の観点からも興味が持たれるところですが、「音量ビブラートはヒトが本来持っている感情表現に近い特性があるから」ではないかと私は考えています。

(喧嘩した時や、緊張した時など、誰にも経験があると思いますが)人は感情が極度に高ぶった際、自律神経のバランスが崩れて呼吸が乱れ、声の音量にも半規則的な乱れが生じます。それを聞いた相手は(仮に言葉が通じなくても)自然かつ本能的にその感情を受け止め、心で相手の気持ちを直接感じ取ることが出来ます。

つまり音程ビブラートで「音量の震えを伴った演奏」をすることで、相手の心に本能的な共感を与え、奏者の想いをより強く訴えかけることが出来ることになります。

また、口笛の場合は音程に加え音量も自由にコントロールすることが出来るため、ビブラートもこれらを組み合わせて自在に制御出来ますが、正確な音程しか作り出すことの出来ない楽器では、必然的に音量ビブラートで音楽的なニュアンスを表現せざるを得ず、これも音量ビブラートが一般化した大きな要因と言えるのではないかと思います。

音量ビブラートの習得法

横隔膜を規則的に振動させ、息の流れを意図的かつ規則的に乱すことで、口笛で音量ビブラートをかけることが出来ます。

言葉で説明すると分かりづらいのですが、ざっくりした感覚として、森進一さんの「おふくろさんよぉ~ 、おふくろさん~」をモノマネしているコロッケさんを連想すると、なんとなくイメージしやすいのではないかと思います。

音量ビブラートは原理的に、ロングトーンの中で音を途切れさせないように注意しながら、吐き出す息の量を強弱させるだけなので、口笛さえ吹ければ比較的容易に習得出来ます。

どうしても感覚がつかめないという方は「強く吐き出す山の部分だけ」を意識して練習してみてください。

あまりにわざとらしい(意識的と感じさせる)音量ビブラートは、音楽的な違和感を与えることがあるため注意が必要ですが、ビブラートの第一歩として、また音楽的表現の幅を広げる手段として、音程ビブラートに加え、音量ビブラートもマスターしておくと良いでしょう。

ミックスビブラート

「音程ビブラート」と「音量ビブラート」を組み合わせ、音量を揺らしながら音程も揺らす「ミックスビブラート」と呼ばれる更に高度なビブラート手法があります。

特に意識して練習しなくても、音程ビブラートと音量ビブラートが習得できていれば、自然かつ無意識的にミックスビブラートをかけることが出来るようになります。

私が公開している口笛楽曲においてもミックスビブラートが随所に使われていますので、興味のある方は是非探してみてください。

参考 鳥鳴響:口笛音楽の世界へようこそ!YouTube

応用編:ビブラートの3要素とは?

音程ビブラートには反復周期の速さ、振幅の深さという2つの要素があり、これらをうまく制御することが情感表現において重要であることは前述のとおりですが、実はさらにもうひとつ、ピッチの位置という3つ目の要素が存在します。

音程ビブラートの三要素

  • 振幅の早さ
  • 振幅の大きさ(深さ)
  • ピッチの位置

以下、それぞれについて、図を交えながら詳しく解説します。

グラフは縦軸が音程(ピッチ、周波数)で、上に行くほど音程が高くなると考えてください。横軸は時間を表しています。青いラインは基準となるビブラートの波形を表します。

1. ビブラートの速さ

ビブラート周期の速さ

青い基準となる波形に対し、オレンジ色の波形(=早いビブラート)は相対的に波の間隔が狭いことが分かります。

初心者が陥りやすい著しく早いビブラート(ちりめんビブラート)は、前にも紹介したとおり音楽的に聞きづらい印象を与えるため注意しましょう。

但し、ごく短い時間、高速なビブラートを楽曲のアクセントとして利用すると逆に心地よいニュアンスとなることもあります。

2. ビブラートの深さ

ビブラートの深さ

青い基準となる波形に対し、オレンジ色の波形(=深いビブラート)は相対的に波のサイズ(振幅)が大きいことが分かります。このように揺れの大きなビブラートを「深いビブラート」といいます。

早さ同様、楽曲に併せて深さを適切にコントロールすることが大切です。

あまりに深いと、自分の演奏に酔っているかのような悪い印象を与えますが、強調したいところでピンポイントで深いビブラートを利用すると、良い意味で強烈なニュアンスを与えられることがあります。

3. ピッチの位置

ビブラートのピッチ位置

黒線が基準音の正確なピッチ位置を示し、青色のラインが基準音を中心とした標準的な音程ビブラートを示しています。ここでオレンジ色のラインが標準的な青線のビブラートに対し、ピッチの位置が全体的に上振れしていることが分かると思います。

弦楽器の多くはビブラートを表現するために弦を押さえながら手を震わせる動作を行うため、このように基準音よりもピッチ位置が上ぶれしたオレンジ色のビブラートがビブラートの基本となります(図ではオレンジ色のラインが一部、黒線を下回っていますが、ピッチが下げられない楽器では、全領域が黒線の上に位置することもあります)。

一方、声楽や管楽器など、音程を自由に変化させることが可能なケースでは、青いビブラートも、オレンジ色のビブラートも演奏家の好みでどちらも利用されます。

口笛の場合はちょうど楽器と声楽の中間的な位置にあるため、もちろん、どちらを利用しても構いませんが、青線のビブラートは安定感を与え、オレンジ色のピッチ位置を上振れさせたビブラートは緊張感を聞き手に与える効果があるため、曲調に応じ、これらをうまく使い分けると良いでしょう。

尚、図とは逆に、基準ピッチに対し下振れするようなビブラートは一般に、音程(ピッチ)が悪く聴こえ、奏者の演奏技術が未熟であるかのような印象を聞き手に与えるため、たとえピンポイントであっても下振れしたビブラートにはならないよう注意しましょう。

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