柴田晶子:Masters of Musical Whistling 2019優勝

口笛奏者 柴田晶子

アメリカで開催されたThe MASTERS of Musical Whistling(MMW 2019)において見事優勝し、口笛世界チャンピオンに輝いた口笛奏者 柴田晶子(しばた あきこ)さんに寄稿を頂きました。

柴田晶子さんは、世界的に最も著名な口笛奏者のひとりで、MMW 2019以外にも数多くの受賞経験を持ち、現在もライブ、メディアなどでマルチに活躍する他、口笛講師として後進の育成にも積極的に取り組まれています。

口笛奏者 柴田晶子さんの主な大会成績
  • 2008年 国際口笛大会 成人女性の部・総合2位
  • 2009年 国際口笛大会 成人女性の部・総合3位
  • 2010年 国際口笛大会 成人女性の部・総合優勝
  • 2010年 くちぶえフェスタ「パカラマ!」最優秀賞
  • 2012年 国際口笛大会 成人女性の部・総合優勝
  • 2012年 埼玉県川口市より芸術奨励賞
  • 2014年 国際口笛大会 Entertainer of The Year受賞
  • 2019年 The MASTERS of Musical Whistling・総合優勝
  • 2020年 埼玉県より埼玉グローバル賞を受賞

柴田さんは、MMW2019にどのように向き合い、世界チャンピオンの栄誉を勝ち取ることに成功したのでしょうか。

口笛を趣味とする方や、今後口笛大会へのエントリーを考えている方にとって、多くの示唆を与える寄稿となっていますので、是非最後までご覧ください!

はじめに

2019年8月23日~24日の2日間、アメリカで行われた「マスターズ口笛音楽コンクール」に出場してきました。これから大会出場を目指す方への参考になれば、と大会についてご報告させて頂きます。

口笛奏者 柴田晶子

2019年大会ルール

まず、事前の音源審査によって3つのグループに分けられます。

  • Stage 1(初級)
  • Stage 2(中級)
  • Stage 3(上級)

エントリーできる部門は以下の5つです。

  • 音源伴奏(クラシック)
    メロディを抜いた録音伴奏に合わせて、クラシック曲を演奏する部門。
    *全員がエントリー
  • 音源伴奏(ポピュラー)
    メロディを抜いた録音伴奏に合わせて、ポピュラー曲を演奏する部門。
    *Stage 1(初級)、Stage 2(中級)がエントリー
  • LIVE BAND
    バンドによる生演奏に合わせて演奏する部門。
    *Stage 3(上級)がエントリー
  • 弾き吹き
    ギター、ピアノ、ウクレレなど、楽器演奏をしながら口笛を吹く部門。使用する楽器は何でも良く、選曲のジャンルも自由。
    *Stageに関わらずエントリー可
  • Allied Arts アライドアーツ
    口笛を使っていれば何でも良しのエンターテイメント部門。踊りながら口笛、歌の間奏に口笛、寸劇の中で口笛など、思いついたアイディアでパフォーマンスをする部門。
    *Stageに関わらずエントリー可

審査はStageごと、部門ごとに行われ、最後に総合順位が発表されます。なお、総合の審査にはLIVE BAND部門が必須なので、必然的に、Stage 3の中から世界チャンピオンが選ばれることになります。

開催地パサデナについて

大会の開催地パサデナPasadenaはロサンゼルスの北東に位置する街です。

私は大会前日の8月22日(木)に成田空港を出発し、10時間ほどのフライトを経てロサンゼルス国際空港へ、空港からパサデナまでは、事前にSuperShuttleという乗合タクシーを予約して向かいました。空港から45分ほどでした。メトロを乗り継いでダウンタウン経由でも行けますし、交通の便は良いところです。

ロサンゼルス国際空港(LAX)

パサデナは「オールド・パサデナ」と呼ばれる、昔ながらのアメリカの街並みが残されたエリアが見所です。

パサデナの街並み

良い雰囲気のお店やレストランも多く、ストリートをブラブラ歩くだけでも楽しめました。少し足を伸ばすと、名作映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で50年代のドクの家として使われた家、Gamble House(ギャンブルハウス)もあります(ちなみに街中の移動はUberが大変便利でおススメです!)。

Gamble House

大会会場は、町の中心部にある「カンファレンス・センター」で、すぐ近くにスターバックス等のお店もたくさんあります。また、会場ロビーにもサンドイッチやドリンクを販売するコーナーがあったので、大会の間に小腹が空いた時にはそこを利用していました。

MMW2019の会場となったカンファレンスセンター

大会初日

1. 受付&オリエンテーション

初日(8月23日金曜日)は朝8時半から受付開始。なかなか早いスタートです

集合時間よりも少し早めに会場付近には到着したものの、入り口がわからずウロウロ・・・困っていると後ろから「アキコ!」と声がかかり、振り向くとスペイン人のJoseさんが私を見つけてくれました。

Joseさんは日本の口笛大会にも参加してくれているので顔見知りの出場者でした。私が口笛の国際大会に初出場したのは2008年なので、それからかれこれ12年、こうして世界中に知り合いが増えていくことが、口笛を続けていて良かったなぁ、と心から思える瞬間でもあります。

会場入り口の受付デスクで名札を受け取り、いよいよ始まるぞ!という雰囲気に。

会場受付付近の様子

続々と集まる出場者としばし談笑などして、その後は部屋に移動してオリエンテーションがスタート。

主催者のCaroleが大会の進め方や注意事項、演奏する際の心構えなどを説明してくれました。もちろん全て英語なので細かいところまで聞き取れず困っていると、参加者の一人である武田裕煕さんが日本語とスペイン語の通訳を買って出てくれました。日本人はもちろん、スペインやペルーからの参加者も多かったのでみんな大助かり。

彼は大会が始まる前から、各国からの参加者がオンラインで交流できる場所を作ってくれたりと、陰ながら大会を支えてくれていました。貴重な人材。ありがとう、武田さん。

2. LIVE BAND部門リハーサル

午後からは、Stage1(初級)の音源伴奏(クラシック・ポピュラー)がスタートし、それと同時に、別会場では翌日のLIVE BAND部門のリハーサルが行われました。

バンドリハーサル

事前に送っておいた楽譜を元に、実際に音合わせをしながら尺やタイミングなど、バンドと打ち合わせます。バンドリーダー・ギタリストのAjayと、彼の率いる3人のメンバーは素晴らしく(キーボードJenny、ドラムEsteban、ベースDamani)、全員分のリハーサルはかなり長い時間に及んだのですが、最後まで出演者からのリクエストにひとつひとつ丁寧に対応してくれました。

このリハーサルですっかり本番への安心感を得られたように思います。

3. アライドアーツ部門

夕方からはAllied Arts アライドアーツがスタート。

このアライドアーツは、国際口笛大会(International Whistlers Convention)時代から続いている部門で、出演者がそれぞれ工夫を凝らしたパフォーマンスを行う、口笛コンクールならではの楽しい部門です。

私は「手回しオルゴールと口笛」の演奏を披露し、お客さんや出演者から大変好評を頂きました。オルゴールと口笛の相性の良さを伝えることができたかなと思います。

大会2日目

4. 音源伴奏部門

二日目の朝は、Stage 2&3の音源伴奏部門から。アルファベット順だったので、私が(AkikoのA)トップバッターでした。ひぇーーー!ドキドキする間もなくスタート。朝イチのトップバッターは、寝起きである上にマイクと伴奏の音量バランスをつかみきれず、難しいことだらけでしたが、終わってしまえばあとはリラックスタイムなのが良いところ。

サラサーテ作曲の「カルメンファンタジー」を演奏しました。完璧とは言えない出来だったけど、吹き慣れた曲なので大きなミスはなかったかな、と思います。

*なお、Stage 2(中級)の参加者は、クラシックの後にポピュラーと、2曲続けて演奏することになります。

5. 弾き吹き部門

午後からは弾き吹き部門がスタート。

出られるものには全部出る」というポリシーのもと、この部門にもチャレンジしてきました。20年ぶりくらいにピアノを猛練習して臨みましたが…これが一番緊張しました

演奏したのはヘンデル作曲の「オンブラマイフ」。心がけたことは、「たとえピアノを失敗しようと、決して動じずに平常心で口笛を吹く」これです。案の定、ピアノは数カ所ミスしたけれど、口笛だけは最後まで美しく演奏できました。もともと大好きな曲でもあるので、曲に没頭できたのが良かったかもしれません。

6. LIVE BAND部門

夕方からはいよいよクライマックスのLIVE BAND部門

この部門の存在が、今回私がこの大会に出場したいと思った大きな理由の1つです。海外で生バンドと一緒に口笛が吹けるなんて、、こんなに貴重な機会はなかなかありません。ただ、なんと、今度はアルファベットの逆順だったので、ラストバッターでした。最後まで緊張が続きます。。

とはいえ、この部門は上級者ばかりでもあり、観客としても大変聞き応えがありました。口笛だけでなく、アンサンブルのバランスや曲との親和性、そしてバンドメンバーとの一体感など、カラオケ伴奏では感じられない多くの要素が加わって、とても面白いなと感じました。生演奏って素晴らしい!!!

私はデューク・エリントンの「A列車で行こう」を演奏しました。これも大好きな曲です。本番はリハーサル以上に楽しく演奏できたように思います。

柴田晶子さんとバンドメンバー

7. 表彰式

私の成績を部門別に発表しますと、

Allied Arts アライドアーツ・・・1位
「手回しオルゴールと口笛」の組み合わせが世界に認められたようで嬉しい瞬間でした。
2位は、トロンボーンと口笛のデュオ、という斬新なパフォーマンスを披露してくれたTracy Echeverri(日本大会出場時に、テレビ番組Youは何しに日本へに取材され、一躍有名になった彼女です)

音源伴奏(クラシック)・・・1位
やはりクラシックは吹き込み量が大事だな、と実感しました。何年も練習してきた曲なので、安定していたのだと思います。

弾き吹き・・・3位
1位は、ギターの弾き吹きで「Change The World」を演奏し、客席の大喝采を受けた武田裕煕さん
2位は、現在注目されているバンドNobelbrightのボーカリストとして大活躍中の竹中雄大さん

LIVE BAND・・・3位
1位は、情感たっぷりの演奏で客席の涙を誘ったアメリカのChristian Smeltzer
2位は、リズム感抜群のノリで会場を盛り上げてくれたスペインのMarisa Pons

総合順位

1位 Akiko Shibata
2位 Yuki Takeda
3位 Marisa Pons

おそらくかなり僅差だったかと思うのですが、2019年大会のWORLD CHAMPIONを受賞することができました!

見事世界チャンピオンを獲得

あとがき

今回7年ぶりに口笛大会に参加者としてエントリーして思うことは、もちろん緊張感はあるものの、やっぱり大会は楽しい!ということです。主催者も参加者も、そこに集まる全員が、国や性別や年齢など全ての垣根を超えて、ただただ「口笛」に真面目に真摯に取り組む純粋さが、大会にはあると思います。

世界中から集まる口笛好きな人達との交流は、何にも変えがたく楽しい時間です。

たくさんのパフォーマンスを見て、好きなところを伝えたり、逆に質問を受けたり。こんなに本気に取り組んでいなかったら、決して知ることのない世界でした。私の人生に口笛があって本当に良かったと思います。

これからも、いろいろな形で口笛に関わっていくつもりですが、今回の大会での経験も新たな糧にしながら、ますます音楽としての口笛が世界に広まる一助になることができれば、と思います。

最後に、この素晴らしい大会を主催してくれたCarole Anne Kaufmanに心からの感謝と敬意を表します。

以上で大会レポートは終わります。お読み頂きありがとうございました。

口笛奏者 柴田晶子


参考
柴田晶子さんへのお仕事の依頼はこちら口笛奏者 柴田晶子 公式

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